◆走り出すわたし

～確かに、聞こえた。


幼い頃から　あの音楽が、　近くの道の　どこかから、鳴り出すと、


わたしは、欲求を刺激され、どうにもこうにも　落ち着かなくなる。



「これは　近い」



音楽の　聞こえ具合から、そう判断した　わたしは、


財布と　コートを　ひっつかんで、下駄履きで　外へ走り出した。



道端に停車した　ワゴンめがけて、突進してくる　大人を　見て、明らかに　おじさんは　ひいていた。





後ろの　陳列棚を　開けてくれるのを　待ちかねて、注文する。




「チョコレートパンと、ジャムパンと、クリームパン　ひとつずつ下さい」～









わたしは、昔から　この移動パン屋さんが　来たことを知らせる音楽が、聞こえ始めると、買いに走らずには　いられないのです





けれど、さいふを片手に、目的に向かって　激走しているときは、爽快です。






後先考えず、走り出さずにはいられない・・・




これが申酉天中殺の、性なのです